投稿

11月, 2013の投稿を表示しています

線量低減の為に必要なこと

①可動絞りの利用 可動絞りを利用して、X線診断上必要な範囲で受像面やカセッテ枠内に絞る。可動絞りによって照射範囲をコントロールすることが出来る。ちなみに工業用のX線装置には可動絞りがない。JISの規定は こちら 医薬品医療機器総合機構HPに様々な可動絞りの仕組みが掲載されている。一例としては これ 。 X線撮影装置の絞りは特殊な形をとっていて、奥羽根・上羽根・下羽根に分かれている。絞りを回すことによって羽根が動いて、照射野が調節される仕組みになっている。 ②生殖腺の防護 子宮など、生殖腺に多量のX線を照射してしまうと、細胞分裂を盛んに行い、若い細胞が多い組織であるぶん、被爆に寄る遺伝的影響も大きくなると考えられる。( ベルゴニートリボンドウの法則 から、放射線感受性の高い細胞は、未分化で細胞分裂が盛んな細胞である。) ICRPの2007年勧告では、生殖腺の組織荷重係数は0.08となっていて、被曝することで個体が死に至る可能性は低く見積もられている。 ただ、特に子宮の場合、胎児や子供に影響するかも知れないので、特に生殖腺は避ける、あるいは防護しなければならない。ICRPもこれについてはかなり力を入れている。 子宮やそれ以外の場所をおおい、鉛をあててX線の被爆を低減させる工夫が必要だ。 因みに、X線CTなど、検査の種類によって被爆線量が高い場合もあるが、CT1回だけなら胎児に影響を与えることはないそうだ。逆に母親が不安状態に陥ることが影響を与え、奇形を作ってしまう可能性がある。 ③高感度システムの活用 直接or間接システムを使って行う。低い線量でも感度よく撮影することが出来るようになれば、被爆線量を相対的に低くすることが出来るからである。 ④AEC(Automated Exposure Control) X線照射開始と同時に平面検出器(FPD)により線量を経時的に測定し、最適なX線線量となった時点で照射を停止。 ただ、AECもおばかなところがあり、短時間撮影時に線量の立ち下がりの遅れが影響したり、逆に長時間で撮影した時に線量が ⑤適切なGridの使用 Grid比5~8:管電圧70~100kV Grid比10~14:管電圧100kV~ ちょうど、グリッド比の値が管電圧の2桁目の値になるとよいみたいです

X線管からどうやってX線が発生するのか??

X線の発生 「X線は陰極から放出された熱電子が陽極の物質と相互作用をおこすことで、発生する。」 …この文章には実はいろんな意味が隠されている!X線装置は様々な仕組みが施されることで、医療行為に利用出来るX線画像を提供しているのだ。 まず、 ①陰極で熱電子が放出される仕組み ・電子はX線装置によって加速され、陰極から放出される。 ・ 陽極と陰極の電位差=管電圧。 管電圧が150kVの場合、接地電圧は、陽極=75kV、陰極=-75kVとなり、合計で150kVとなる。流れる電流は直流に変換されている。 ・金属を熱することで熱電子を放出する。発熱量が変われば熱電子の量も変わる。タングステン(W)でできたコイル状のフィラメントを用いる。 ・フィラメントに50V程度の可変電圧を加え、調整することで、熱電子発生量を調節する。(ちなみに照明もほぼ同じ仕組みで、フィラメント構造から発生する電子密度を高めることで、発光量を上げている) ・電子はマイナスの電荷を持っていて、互いの電子が陽極に着くまでに反発し合って広がってしまう。そのため、フィラメント周囲に陰極と同じ電位の電極を取り付けることで、電子が広がらずに陽極一点に集束するようにする。これを 集束電極 と呼ぶ。これは陽極の広がりに寄る ぼけ(半影) を防ぐ働きをしてくれる。 ②熱電子が陽極の物質と相互作用をおこす仕組み ・熱電子は陽極の物質に衝突した時に、原子のクーロン力によって制動され、制動された分エネルギーとしてX線が放出される。ブレーキで火花が散るような感じ??99%は熱エネルギーに変換されるけれど、1%はX線のエネルギーに変換される。 ・熱電子が陽極の物質と相互作用をおこす為には、陰極から陽極の間が真空状態でなければならない。空気分子と衝突するとその分発生効率が悪くなるからである。よって、ガラス管に入れて真空とする。(真空状態=10^-7torr) ・陽極の物質もある一定の条件がある。内郭電子の数が多い(原子番号が高い)こと、熱に強い(融点が高い)こと、導電率が高いこと、熱伝導の性質を持っていることが挙げられる。これらに該当するのがW(Z=74)であり、タングステンはよく用いられる。

Youtubeで試しに動画を作成してみました。

X線写真の撮影原理①【X線が出来て、被検者を透過するまで】

イメージ
光や電磁波などを被験者に照射、返ってきた二次信号をフィルムやイメージングプレートなどの被写体に検出させて、アナログ・デジタルいずれかの形で画像にする。 wikipediaより成人男性の胸部写真 アナログの場合は、フィルム内に広く分布するハロゲン化銀と光電子の化学反応により、 潜像を形成するため、物質的な要素が多いが、デジタルの場合は返ってきた二次信号に対して演算処理を行う。 先日お邪魔したAZE展を見る限りだとデジタルによる画像編集技術が非常に発展してきており、 ぶっちゃけコンピューターが使えないと仕事にならない 、話にならないという話を伺った。 それでも、やっぱり 「手書きの絵が下手な人がいきなりデジタルで絵を描こうとするとやっぱり下手」 というのと同じで、その人の本質的な技量はいかに線量を的確に設定し、必要な撮像条件を確保して撮影出来るかというところにあるので、アナログ写真の知識は欠かせない。 写真に用いるX線量を規定するのは、①どれだけの熱電子がフィラメントから放出されているか②その熱電子が陽極に衝突してどれだけクーロン力で制動されるか③産生された制動X線が被験者に照射されてどんな風に減弱するか にかかっている。 ①には、X線管にかかる管電圧、熱電子量の基準となる管電流 ②には、制動する陽極の原子の種類(原子番号Z):内殻電子数が多い程よく、W(タングステン)が主に用いられ、MMG(マンモグラフィー)の場合は、Mo(モリブテン)がよく用いられる。 ③には、被験者の身体の大きさ、特徴によって決まる。 ③は特に、 I=I 0 e^-μd(I:透過X線のエネルギー I 0  入射X線のエネルギー μ:線源弱係数 d:物質の厚さ)の式で規定される。

骨格筋について

骨格筋の最も小さな単位は、筋原線維から構成されており、筋原線維があつまり筋線維となり、筋線維が束となって筋束となる。 筋原線維の収縮は アクチン と ミオシン の相互作用によって行われる。筋原線維があつまって出来る骨格筋線維は酸素を用いてミトコンドリアが活性化する好気的代謝を行う Ⅰ型 と嫌気的代謝を行う Ⅱ型 とがある。 Ⅰ型が姿勢維持など、瞬間的な収縮速度を必要とせず( 遅筋 )、ミオグロビンやミトコンドリアを多く含む( 赤筋 )。 Ⅱ型は瞬間的な収縮速度が速く( 速筋 )、ミオグロビンの量が少ない(白筋)。 身体の様々な部位によって、これらⅠ型、Ⅱ型に別れていて、日常生活の機能を果たしている。スポーツなら、ラケットの素振りはⅡ型の白い筋肉、身体の体勢維持はⅠ型の赤い筋肉である。(人間にも赤身と白身があるのだろうか・・?) 神経線維には、 運動神経線維 と 知覚神経線維 があり、割合は6割4割である。筋に収縮する命令を伝える遠心性線維が、運動神経線維であり、運動性神経線維とそこからでる胞体突起をあわせて 運動ニューロン と呼ぶ。 1つの筋線維は、通常1個の神経終板をもつが、2個以上持つ場合もある。1つの運動神経線維とこれに支配される筋線維をあわせて 運動単位 と呼ぶ。 運動単位で考えると、身体の部位によって、運動単位の大きさが様々なである。手のように細かい動きが必要な場所の場合は、筋線維や神経が細かく入り組んでおり、必要な運動機能が沢山あるので、運動単位自体が小さいが、臀部など細かい動きが必要な場所では、1つのニューロンで 200個以上の筋線維 を支配している場合がある。 知覚神経線維は、 知覚したインパルスを中枢神経に伝える 働きを持つ。 痛覚や筋肉の収縮・伸展の感覚を脳や脊髄に信号として送る求心性線維である。深部感覚は特に、筋紡錘が終末構造になっている。 筋肉の痛みであるとか、筋肉を動かした時の感覚はこの神経線維によって中枢神経に伝わり、「痛い」とか「しっくりくる」といったような感覚になる。 こうした用途によって異なる筋肉や、その動きの指令を司る神経によって、人は姿勢を維持したり歩いたりなどの日常的な活動ひとつひとつを行うことが出来る。 では、これらの筋肉の機能は何でコントロールされるか??基本的には 張力の大

撮影検査の前にチェックしなければいけない5つのこと

イメージ
①患者氏名の確認 …名前・名字を本人に名乗っておく。本人に姓名を名乗ってもらう。実際に、名前をきちんと言ってもらわなかったせいで、別の人を撮影してしまったというケースも過去にはあるらしい。 ②検査部位の確認 …長時間を要する場合、おおよその所要時間を告げる。患者の協力を得る。特に身体に不快感のある人には、「しっかり固定して下さい」とか「しっかりたっていて下さい」と言わなければいけない。もし苦しい場合、MRIなどで長期間かけて撮影する時等は、撮影に最適な状態をずっと維持するのは難しいので、一番楽な体位にするのがベストである。 ③検査衣の着衣 …専用の検査衣を着用していただく。最近では、患者を全裸にさせて写真を撮ることは少なくなった。ただし、磁性体などの障害陰影になる要素の有無を確認する必要がある。 (※乳幼児の撮影時はおむつを外さないと、陰影が映ってしまう) 足底基準線から10°回旋 ④ポジショニング …無理なく撮れる姿勢で撮影し、必要な情報を記録出来るようにする。その際、固定具の使用や角度計の使用等により、正確な基準をもっておき、写真の量的違いが何に起因しているかを判断することが出来るようにする。 ⑤散乱線の除去 …管電圧が高いほど散乱線は発生し、写真濃度に影響してしまう。そこで、X線透過度の高い物質と低い物質を交互に組み合わせたグリッドをはさむことで、バラバラな方向に進行するX線を吸収し、不要な濃度を削除する。 管電圧が70~100kVの時は、グリッド比を5~8にし、100kv以上の時は、グリッド比を10~14に設定する。 その他にも、可動絞りを利用して、受像面を絞る、高感度システムを利用し、線量単位の感度をよくすることで、設備面の調整から被爆線量を調節したり、(AEC自動露出機構もある。)生殖腺などの被爆に寄る遺伝的影響の大きい部分の線量を可能な限り低減させるような活動も必要である。

関節の機能

整形外科学は、 運動器の治療を通して患者のQOLを保障する 診療分野の一つである。 運動器には主に、骨格系と骨格筋があり、これらは立つ、座る、歩くといった運動を司っている。そして、これらを統御するのは脳や脊髄から伸びる神経系である。そして、これらの運動は、我々の日常生活を営む為にも欠かせない存在である。 病理の典型としては、痛みやしびれといったものがあり、様々な発生機序が考えられる。 関節には運動と支持の性質があり、関節運動が平滑に行われる為に関節軟骨の組成と滑液が存在する。 これら骨や関節が適切に描出される為にポジショニングや角度などは知っておかなければいけない。 分類としては以下の通り ①部位別:体幹・四肢の全て ②器官別:脊椎・脊髄末梢神経・関節・手足 ③病態別:先天性疾患・変形・炎症・骨軟部腫瘍・加齢変性・骨折・脱臼などの外傷。 関節リウマチの治療、スポーツ医学、リハビリテーションなどは整形外科の範囲になる。 治療手技としては、四肢・体幹の解剖・運動機能を確認して、疾病や損傷における特有の症状や所見を確認する。X線写真や造影検査により骨格を確認。軟部をMRIで確認することが出来る。現在では三次元CTやMRIがよく用いられるようになっている。 また、同時に生化学検査を行って疑わしい疾患をみたり、 電気生理学検査、核医学検査、歩行分析 などを行う。 主目的としては、 運動機能の回復であり、解剖学的復元ではない。 つまり元通りの体に戻らなくてもまずは、歩いたり動いたり出来るような体にしようということが主目的になる。切った貼ったでなく、保存療法(理学療法)が求められることもある。

骨の構造について

<骨の各部位> 骨は骨膜と骨質と骨髄からなる。 骨膜は繊維性結合組織で、骨の保護を行い、骨の栄養供給を栄養孔を通じてフォルクマン管より行っている。 骨質は緻密骨と海綿骨に分かれており、緻密骨はハバース系という円柱形の構造をしており、内部にハバース管という管が縦に通っていて、フォルクマン管と直行するような形で連絡している。海綿骨は多数の空洞をもった骨端部分である。 <骨の代謝と成長> 骨は細胞であるので、代謝と成長を行う。 代謝は主にホルモン、カルシウム、運動に寄る負荷で行われる。ホルモンは主にカルシトニン・副甲状腺ホルモン・ビタミンD3が関係している。骨は成人の場合、全体の3〜5%が吸収と再形成を繰り返しており、破骨細胞と骨芽細胞によりリモデリングしている。リモデリングが機能していない場合は、骨粗鬆症になる。 また、成長は軟骨内骨化と結合組織性骨化がある。軟骨内骨化は幼児期の硝子軟骨から徐々に軟骨内が石灰化し、海綿骨が形成されていくプロセスである。これは縦に成長し、骨膜が骨化することでだんだん骨が太くなっていく。子供の頃は骨端部に骨端軟骨の部分がX線撮影では濃度が低く出るため、骨と骨の間が離れているように見えるが、これは内骨化のプロセスの段階だからである。成熟した骨は骨端軟骨は消滅し、骨端線が残る。 一方、結合組織性(膜内骨化)骨化は、皮質骨が骨膜から形成され、横径成長を行う。

内科学のはじめ

人間は様々な外的ストレスを受けて生きている。環境変化や体内への物質流入等、様々な外的要因が身体に影響を与えており、それらを加味しながら、個体レベルで恒常性(ホメオスタシス)の維持を行っている。 そして、個体の最小単位の活動は細胞が担う。全ての細胞は他の全ての細胞に由来している(Omnic Cellua)とウィルヒョー(R.Virchow)はのべ、細胞病理学の基礎を作った。ウィルヒョーが述べた血管障害の3要素として血管壁の障害、血流のうっ滞、血液性状の変化が挙げられる。 身体が受ける環境要因には内部環境と外部環境があり、内部環境は個体が恒常性を維持するため、調節、変更し治すことが出来る。 外部環境による一般的なストレスは主に3つの形で身体に現れる。副腎肥大、胸腺退縮(involution)、胃・十二指腸への潰瘍である(例:ロキソニンなどのNSAIDS:非ステロイド系抗炎症剤を飲むと粘膜の分泌を抑えてしまい、胃腸組織へのダメージを与える) 外的ストレスに対する身体の反応は汎適応症候群(general adaptation syndrome:GAS)と呼ばれる形で現れる。( 参考ページ :「メンタルヘルス対策のカウンセリング・ストリート」)その初期では、身体がストレスに対して警戒反応(fight or flight)、抵抗期、疲弊期に分かれる。警戒反応初期では、副腎皮質の働き、交感神経の働き、副腎カテコールアミンの働きが亢進し、抵抗期では正常状態とほぼ同じ均衡状態が保たれるが、やがて、恒常性が崩れて、それぞれの働きが低下して死に至る。 これは例えば冬に雪山で遭難したような時を考えると分かり易いかもしれない。山で遭難したある少女は顔面蒼白で胃に潰瘍が出来ていたらしい。 体内の恒常性を保つ働きとして内分泌系、神経系、免疫系の3つの存在がある(ホメオスタシスの三角形)それぞれホルモン、神経伝達物質、サイトカインによって相互連絡し、体内の調整を行っている。 脳神経系が司る部分は感覚器から情報を知覚し、脳や脊髄へ伝達し(afferent:求心性)、運動器へ指示を伝える(efferent遠心性) ベルグソンいわく、体性神経の刺激が自律神経の刺激、自律神経の反応が体性神経運動となり、骨格筋へとつながる。 自律神経は主に内臓器と密接な関