GM計数管のプラトー特性:スケーラーを使って


  GM計数管の実験を行いました。こちらにその概要を書いておきます。

参考記事:GM計数管のあれやこれ気体電離の検出器


GM計数管には一定の印加電圧下において計数率が一定となる領域(プラトー)が存在すること
 プラトー領域を基準にした線源の測定、判別が行えること

GM計数管の基本原理

 GM計数管は電子なだれによる気体増幅を用いて放射線を検出する計測装置である。主にβ線源の計測に有用であり、α線やγ線の電離計測も可能だが、飛程の長さによって、遮蔽を変化させなければならない。


出典:独立行政法人 日本原子力研究開発機構HP


本実験では、入射窓を薄い雲母(数mg/cm)で封じた端窓型を用いる。中心電極と壁材との間に700~1000V程度の電圧を印加しており、入射窓から入った放射線が気体電離を起こすと、気体電離が増幅され(電子なだれ)、計数回路によって計数される。

 放射線束の計数率は非常に高いが、出力信号が電離エネルギーと比例関係に無いため、エネルギー分解能は乏しい。計数効率を高める為に、ヘリウムやアルゴンなどの不活性ガスとハロゲン気体や有機元素を用いた消滅ガスが封入される。                                  

1:GM計数管の測定原理
(出典:一般財団法人 高度情報科学技術研究機構)

 GM計数管は非常に簡便な手法で作成することが出来るため、個人で機材を準備して安価に作成することも可能である。日本では、2011311日以降、市民活動レベルで、個人線量測定に利用されるケースが増え、safecastという個人線量測定のデータマッピングやutsunomiya.comという個人の開発者が自作したGM計数管のノウハウなどが公開している。
 また、医療現場でも、放射線治療を扱う施設において放射線汚染を防ぐ為に各所に計数管が設置されている。

 (2)プラトー特性
 GM 計数管は約1000~1300Vの印加電圧領域(プラトー)において、一定の計数率を示す。これをプラトー特性と呼ぶ。GM 計数管に印加する電圧を変えて一定条件の放射線を計測すると、図2に示すような関係が得られる。

 このプラトー特性はJIS Z4202GM計数管の検査項目においても明記されており、プラトー長さは150V以上、プラトー傾斜は5%以下であることが望ましいとされる。試験はβ線計測を90Sr、γ線計測を137Csを用いて行う。

 Vsを始動電圧(開始電圧)Va Vbの直線間を GM 計数管のプラトーと呼ぶ。プラトー領域では、印加電圧の変化しても線源の計数率がほとんど変化しない為、GM計数管を使用する際はこの領域を用いて計測を行う。

 放射線を測定する場合はプラトーの長さの Va よりのところを使用電圧 (Vo) とする。プラトーにはわずかの傾斜があり、100 [V] あたりの計数の増加する割合をプラトーの傾斜といい[V] C:カウント数)で表す。GM 計数管の良否を判定する一つの目安になる。

         グラフ1:GM計数管におけるプラトー曲線

(出典:東京理科大学理学部 物理学科 学生実験ホームページ)





実験で用いる端窓式GM計数管()とスケーラー()


 ①GM計数管の印加電圧を最低にして、電源を入れて5分間のウォーミングアップを行い、β線源の文字面を上にして試料台に入れて徐々に印加電圧を上げて計数開始電圧の大体の値を調べた。
 ②次に、計数開始電圧の値+100Vがプラトー領域の使用電圧であると仮定し、計数開始
電圧+100Vの値で試料の1分間計測を行った。試料台の段数を調整
し、8000~10000cpmとなる段数(1段目)に試料を置。

 ③リセットタイムを1分間に設定し計数開始電圧から10Vずつ上げていきそれぞれの電圧の計数率[cpm]を測定した。その際、方眼紙グラフにプロットした計数率が直線状に推移しているかどうかに注意する。

 ④急激な計数率の増加傾向が現れた段階で、GM計数管の印加電圧がプラトー領域を越えたものと判断し、直ちに測定をやめる。


 ⑤得られた計数率の結果からプラトー曲線を作成し、放電開始電圧、プラトー開始電圧Va、連続放電開始電圧Vbより(1)プラトーの長さ(2)プラトー傾斜(3)使用電圧(Vc)を求める。


 (2)β線源の裏表判定


 
(1)で求めた使用電圧下でβ線源(写真)の4分間計測を行った。その際、β線源の文字のある面(表面)、文字の無い面(裏面)によって、計数率の変化があるかどうかについて調べた。また、計数台の段数を3段目に変更した。



プラトー特性曲線から、プラトーの特性を示す①プラトーの長さ、②傾斜、③
使用電圧についてデータ処理を行った。

以下に①〜③に関する特性を示す計算式を示す。

   プラトーの長さ:VbVa[V] 
(
Va:プラトーの最小電圧
  Vb:プラトーの最大電圧)

②プラトー傾斜=100(nb-na)/nm(Vb-Va)×100[%]

  (na:Vaにおける1分間計数率 
  nb:Vbにおける1分間計数率
  nm:使用電圧における1分間計数率
  Va:プラトーの最小電圧
  Vb:プラトーの最大電圧)

   使用電圧:Vc=(2Va+Vb)/3[V]
(Va:プラトーの最小電圧
Vb:
プラトーの最大電圧
Vc:使用電圧)


 
次に、試料(線源)の裏表を4分間計数測定した際の1分間計数率を求めた。

 ある線源をt分間計測した際のカウント数がNカウントであった場合、1分間当たりの計数率をR[cpm]とおくと、標準偏差を含めた形で下記のように表される。

R=N/t±√N/t

<参考>
「放射線計測 GM計数管の特性」東京理科大学 理学部 物理学科 
学生実験ホームページ
GM計数管」一般財団法人 高度情報科学技術研究機構ホームページ
)
「各種サーベイメータの種類・性能」独立行政法人 日本原子力研究開発機構HP
)
JIS Z4202 GM計数管」日本工業規格調査会(JIS)
)
JIS Z4202 GM計数管(JIS 2011年版のHTML)kikakurui.com
(URL: http://kikakurui.com/z4/Z4202-2011-01.html)
SafeCast(URL: http://blog.safecast.org/ja/)

UTSUNOMIYA.COM(URL: http://www.utsunomia.com/y.utsunomia/japanese.html)

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