核反応断面積の大きいGd造影剤を用いてMRIガイド下の放射線治療技術が開発され中

東大発、がんに集まる物質をMRIで狙って、がん細胞を破壊(Medley)

GdってみんなMRIの画像診断に使う為の造影剤という印象しか無かったのだけど、
実はアイソトープ手帳を見ると核反応断面積がめちゃめちゃ大きいのです。


がん
の放射線療法を応用した、中性子線捕捉療法という先端技術があります。がんに集まって働く物質を注射し、熱中性子線という無害な放射線を照射することで、体内の物質が反応し、がんを攻撃するというものです。東京大学などの研究チームが、中性子線捕捉療法に使える新しい物質を開発し、MRIでがんの位置を狙って熱中性子線を照射することで、マウスのがんを治療する実験に成功しました。(出典:Medley)

Gdは常磁性体の1つで、プリモビストとかマグネビストといった造影剤の中に含まれているものです。
(出典:八重洲クリニック)

EOB・プリモビストを用いた肝臓造影MRI検査について(八重洲クリニック)

マグネビスト静注シリンジ(バイエルヘルスビレッジ:医療者専用サイト)

よく、Gd-DTPAという造影剤の名前を聞くと思うのですが、これらの造影剤は細胞にとりこまれるものではなく、細胞間隙や血管内を通る物なので、がん細胞に特異的に集まる物ではありません。

SPIOとか、Gd-EOB-DTPAなどは、肝細胞に特異的にとりこまれるものだったりしますが、肝細胞機能を失い造影剤をとりこまないがん細胞を調べている為、がん細胞だけにGdの造影剤を集めることは出来ません。

研究班は、リン酸カルシウムという単純な物質が作る、ミセル体という分子サイズの構造の中にGd-DTPAを組み込んだもの(Gd-DTPA/CaP)とすることで、ガドリニウムががん細胞に集まり、十分な時間だけがん細胞の中にとどまるようにすることに成功しました
さらに、このことによって、ガドリニウムを取り込んだがん細胞がMRIで見分けられるようになったため、がんがある場所にだけ熱中性子線を照射することができるようになりました。
つまり、
  • 細胞を攻撃するガドリニウムががんに集まっている
  • ガドリニウムに細胞を攻撃させる熱中性子線をがんの場所にだけ照射する
という二点によって、がんだけを狙って攻撃することができました。(出典:Medley)
ミセル体というやつは特異的にがん細胞にとりこまれるのでしょうか。原理があまりよく分かりませんが、凄いっすね。

因みに、Gdは核反応断面積が25万barn以上あります。ホウ素の(n,α)反応の約80倍です。そこまで特異的になれば、BNCTも目じゃない感じですね。



また、Elekta社もMRIガイド下の放射線治療を2017年までに実用化するよ〜と言っていて、多分原理はこれだと思われます。

あとは、どんな癌が適応になるかですね。

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