放射線被曝(被ばく)の確率的影響はどうやって調べるのか?

放射線被曝によって起こりうる「かも知れない」影響について考えたのが確率的影響である。

確率的影響は、被曝線量が増えればもちろん起こり易くはなるが、どの値を越えると発生するというしきい値はなく、重篤度も線量にはあまり関係がない。

たとえば、確率的影響のメインとも言えるのが発がんであるが、被曝してもがんにならない人もいるしなる人もいるので、確定的には起こらない、と考えると確定的影響とも区別がし易いだろう。

がんの発生確率は基本的にリニアに考えるが、白血病の場合はある時期から急速に発病率が変化するLQモデルを採用する。2~3年後から発病、7年後に発病のピークにいたる。

また、他には寿命短縮(人間では検証されていない)や、再生不良性貧血(骨髄へのダメージで起こるが、放射線以外でもおこりうる)も考えられる。

90SrやAmなどアルカリ土類金属系は特に骨に集まり易く、半減期も比較的長い傾向にあるので、晩発影響として再生不良性貧血になることが考えられる。

各身体的・遺伝的影響に対するリスクの考え方は、過剰相対リスクと過剰絶対リスクがある。


線量に対するリスクの考え方

影響の発生率を推定する方法は直接法と間接法の主に二つある。

直接法とはネズミ等の動物実験によって発生率を確認する直接法と、自然発生率が倍になる倍加線量を評価する間接法の二つがある。この倍加線量は、様々な影響で突然変異率が倍になる線量を1Gyと設定している。

確率的影響は、これまでの放射線事故などの事例研究をもとにしていて、80年代のチェルノブイリや70年代のスリーマイル、戦時中の広島・長崎の原爆の調査などをもとにしている。(因みに広島・長崎の原爆による被曝では遺伝的影響は無かったと考えられている。)

影響リスクの原因になるのは、物理的因子と生物学的因子がある。

・被曝年齢:若い人の方が細胞の放射線感受性が高くリスクが高い。
・性別:女性の方がホルモンの影響等で発ガンリスクが相対的に高い。特に乳がん。
・遺伝的背景:発ガンリスクの高い遺伝子(BRCA1の異常等)。毛細血管拡張症の因子があると例えば遠隔転移し易いリスクがある。

線量率も影響があると考えられ、ICRPによって、高線量率の被曝/低線量率の被曝における比率は2と仮定されている。(DDREF:Dose-Dose Rate Effect Factor)

因みに放射線荷重係数は線量率は考慮しておらずDDREFによって別個で考えるみたいです。


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