読影勉強①胸部撮影

胸部の読影には定型の順番があり、それに従ってもれなく読んでいくことが重要になる。

①軟部組織:体型、栄養状態を確認することは患者さんの背景を知る上で重要である。

乳房の情報は、正面像から乳頭が描出される可能性もあり、腫瘍との区別が必要である。

(切除されている場合、乳房組織が無い分、片側の肺野陰影が黒くなる)

②骨:姿勢、胸椎の側彎症などを確認する。斜位撮影により、いわゆるdogline像から上下関節、椎体、棘突起の状態を確認し、各椎体の連続性を確認することが出来る。

正面から撮影した場合、椎体の状況から側彎か否かを見ることが出来る。

外傷性の疼痛がある場合、肋骨に変化がないか(縦のひび)が確認することが出来る。

肋骨の異常には、頸肋(肋骨が1つ多い)、偽関節、膿胸などの時に形成された肋骨、フォーク型肋骨、発生時の融合肋骨などが考えられる。

③肺野:血管陰影の見え方。かたより、腫瘍など

肺野の撮影には、気管支造影により肺野を観察するブロンコグラフィーがある。

肺門理が一部描出されない場合を部分気胸、肺の一部がつぶれて黒くなって描出されない場合は、全気胸である。これはトロッカーズチューブで陰圧をかけることで、気胸状態を改善します。

Radiopaediaから気胸の一例を紹介します。sudden onset dyspnea(突然の呼吸困難)に陥った40代の男性のX線胸部撮影を行ったところ、左の肺門理が消失しているのが分かり、白くなっているのは空気が抜けてへこんでいる部分だと分かります。チューブが入っているのも分かりますね。

また、肺野の下部辺縁は、横隔膜の状態を示しています。横隔膜は、「膜」とは言われていますが、その下は筋肉なんです。(筋肉専門サイト参照)

横隔膜の筋肉の起始は、腰椎に付着していて、腰椎を支点にし、横隔膜筋の伸展屈曲(作用点)を行うことで、ふいごのように肺に圧をかけて拡張、収縮させています。

ただ、膜で全てをふさいでしまうと、食べ物や血管や筋肉などが通らないので、それらが通るようにその部分だけ孔が空いています。それが、大動脈孔、大静脈孔、食道裂孔、だったり、Bochdarek孔だったりします。この孔が他の臓器や血管に食い込んでしまうと、よくないです。

例えば、大動脈系から肺に血管が延びている肺分画症、新生児に多いと言われるBochdalek孔ヘルニアなどがあります。

 疾患の場所を特定する為に肺区域(セグメント)についても指摘出来なければいけません。S1~S10の区別の仕方は、以下の写真が分かり易いです。

右肺と左肺の区別方法ですが、S4とS5,6の分岐が異なり、また心臓が格納されているスペースを迂回する為、左主幹の分岐角度?の方が大きいです。また、S7は左肺には存在しません。

(出典:新X線解剖学)


④縦隔:縦隔には内側の組織、大血管や食道、気管が存在します。中央の陰影は様々な組織が重なっていて、非常に濃度が高いです。

また、横隔膜、縦隔内に入っている臓器のシルエットサインは、診断に重要な情報を提供します。


左右の辺縁では、「右2弓、左4弓」という円弧状の辺縁シルエットが重要です。右2弓は上から上大静脈(IVC)、右心房のサイン、左4弓は大動脈弓、肺動脈、左心耳、左心室のシルエットサインが分かります。

例えば、左心室のふくらみが大きいと心臓の拍出に何らかの問題があるのではないか?また、大動脈弓あたりにふくらみがあると解離性の大動脈瘤が発症する可能性があります。

背部痛の方のX線画像所見を見た時に、大動脈弓(第1弓)が広がっている場合、それは大動脈瘤である可能性は大きいでしょう。


CTR=MRD+MLD/TD×100から確認することが出来ます。これが50%以上だと心肥大であり、高血圧状況等の所見として捉えることが出来ます。

ここで注意なのが、心臓のシルエットは空気の陰影を持つ肺が外側にかぶさる形になっているので、正面から撮影すると、辺縁のシルエットがグレーになってしまうということです。


(肺炎のX線所見について紹介しているyoutubeがあったので掲載しておきます。)


  右心房のシルエット〜左心室のシルエットまでがMRD+MLDです。

 心臓の状況を把握する上で、心機能の評価も欠かせない。心臓は血液を体全体に送るポンプの働きがあるため、心臓がどれだけポンプとして動いていて(心駆出率:Ejection Fraction)、実際どれだけ血液を送っているか(心拍出量:Cardio Output)を知る必要がある。(看護rooの看護用語辞典より)

Ejection Fractionは拡張終期(ED)の時の心臓容積と、収縮終期(ES)の心臓容積の割合を見ている。一番小さい時と一番大きい時で差があればあるほど、強くポンプとして動いているということだ。

正常値では60~70%なので、拡張終期を100とすると、収縮期は30~40くらいの大きさになっている。もし、20%程度になっていると、心筋炎症などが考えられる。

心臓の筋肉を栄養している右、左冠状動脈の見え方にも注意が必要です。


(出典:Essential Anatomyより)
  
心臓は左下から見ると、上のように正面から見ることが出来ます。

つまり、普段見ているこれは斜めなんですよ。


心臓は水平面に対して45°程度下方、正中面に対して30°程度左に傾いているそうです。(間違ってたら済みません)

その為、右前斜位(RAO30°)尾頭方向(Ca-Cr25°)が心臓の側面像で、LAO45 Ca-Cr35がちょうど心臓の正面像になります。血管造影を行うと、心臓の正面像では、左前下行枝と左回旋枝が正面に、心臓の側面像では、接線上に描出されます。

血管腔は管状の構造をしているので、例えば、50%閉塞していても、閉塞側の真側面から見たら、分からない訳です。その為、RAOとLAOのように両斜位から撮影して、きちんと描出されることを確認します。

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