放射線の分類・用途・種類

(放射線の分類)
放射線は電磁波と粒子線の二つに分かれる。粒子線は粒子が飛んでくる流れ。揺れるエネルギーの動きが電気的に磁気的に周期的に変化するのが電磁波である。ちょうど、水が揺れているものを波というけれど、それと同じことが起こっている。

(基本的な放射線の原理)
波は物体に当てると、様々に変化していく。放射線も同じであり、人体に照射すると、形や質に応じて、透過したり、反射したりして、最終的にフィルムやセンサーなどで検出される。

これが、放射線写真の原理である。

レントゲン写真の最初の発端は、電極管の研究をしていたレントゲンが実験に使っていた電極管から放出されていた放射線が蛍光物質を塗った実験材料がたまたま被写体となって、光っており、自らの手の透けた映像を偶然見たことがきっかけだった。

X線が透過する物質・透過しない身体の部位があり、それによって骨や内臓部分を浮き出して確認することが出来るようになった。

X線を用いているだけで、レントゲン撮影も写真の一種であり、被写体に露光させ、現像、画像形成するという点では全く普通の写真と同じである。

現代では、このX線の代わりに超音波の波を使ったり、原子核の磁気共鳴を使ったり(MRI)しながら、アナログ映写やデジタルによる演算処理を用いて、人体の内部構造を分析する手法がどんどん発達してきており、もはや、CTやMRIの無い医療は考えられない、という段階まで来ている。

(放射線の種類)
放射線は具体的にはα線、β線、γ線が代表的である。α線はヘリウムの核、β線は電子(−は中性子が陽子に変わる際に出てくる陰電子、+は陽電子)、γ線は励起状態の原子から放出されるエネルギーである。これらは原子が何らかの影響を受けてエネルギーや粒子を放出する時に現れる。この現象には、α壊変とかβ壊変などがある。

α壊変は陽子2個と中性子2個(α粒子)を放出し、原子番号が2、質量数が4少ない核種へと変化する現象のことである。

例:Ra(質量数226)→Rn(質量数222) 半減期:1.6×10^3y エネルギー4.784(MeV)

・・・この時の壊変前のRaを親核、壊変後のRnを娘核という。

β壊変にはβ−壊変とβ+壊変がある。

β−壊変は中性子過剰の原子核内で、中性子が崩壊(n→p+e-+ν-反ニュートリノ)して(陰)電子が放出され、原子番号が1だけ大きく質量数が同じ原子核に変化する現象のことである。

例:H(質量数3)→He(質量数3)半減期12.3y エネルギー18.6keV

β+壊変は陽子過剰の原子核内で、陽子が壊変して(p→n+e++νニュートリノ)陽電子が放出され、原子番号が1だけ小さく質量数が同じ原子核に変化する現象のことである。

例:C(質量数11)→B(質量数11)半減期20.39min 放出放射線:β+線(消滅γ線)
陽電子(e+)は、真空中では安定であるが、物質中では平均寿命e-と自然消滅したり、陽電子一電子対(ポジトロニウム)を生成したのち、10^-7~10^-9sの寿命で消滅する。このように対消滅した陽電子と電子の質量は光エネルギーに変換されるので、

me=9.1×10^-31(kg)より、

E=mc^2より 二つの電子(陰電子・陽電子)×光の速さ二乗
      =2×9.1×10^-31(kg)×(3.0×10^-8(m/s))^2
                    =2×8.19×10^-14(Jあるいはkg・m^2/s^2)

1eV=1.602×10^-19Jとすると、

E=2×8.19×10^-14/1.602×10^-19=2×0.511×10^6(eV)=2×511(keV)

となり511keVの消滅γ線が2本放出される。

α、β壊変の他にEC壊変というのも存在する。EC壊変とは、陽子過剰の原子核の陽子が、おもにK軌道の電子を捕獲してp+e-→n+νとなる壊変のことである。つまり原子内で起こる。

γ線放射は、α壊変、β壊変などが起きたのちも、

状態が不安定になり易いもの(放射線同位体=RI)ほど、放射線を放出し易い。

物質を電離させる放射線を電離放射線とよび、粒子線と電磁波の二つに分類される。これらの人体への影響は様々で、種類に寄ってダメージが違う。

(核の変化と核種・核異性体)
核種とは陽子と中性子の量によって、原子を分類していったものである。
核種の中でも電子がs→p→d→f軌道へとより高いエネルギー準位の軌道へ電子が移動(昇位)しており、不安定な状態になっている核種を核異性体と呼ぶ。これが励起状態から
基底状態へ変化する時に放出するのがγ線である。

(中性子が陽電子同士の反発に対してバランスをとっている)
同位体とは、同じ元素で中性子数の異なる種類のものをさしている。同位体には、安定同位体と放射性同位体が存在しており、安定同位体の存在する元素は、中性子の数が多少前後しても状態が安定している。原子番号が増えれば増える程、より不安定になっていくために、Tc、Pmおよび原子番号83(Biビスマス)以降は、安定同位体が存在しなくなってしまう。

放射性同位元素(=放射性同位体:radioisotope)は、構造が不安定なため時間とともに放射性崩壊していく核種(原子)である。放射線技師の現場では、RIと呼ばれており、SPECT(単一光子放射断層撮影)などでTcなどがよく利用されると言われている。


骨、心筋、脳のSPECT測定にTcが使われる(wikipedia参照)

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