読書感想文:放射線と人間〜医学の立場から〜①

読書感想文で読んでいる2冊目の本です。放射線と人間〜医学の立場から〜という本を、Amazonの中古で安く買って読んでいます。


この本自体はかなり古く、初版が1974年なので、書かれている現状もかなり古いですが、逆に参考になることも沢山ありました。

19世紀末にレントゲンがX線を発見し、ほどなくして医療へのX線利用が始まりましたが、放射線に関する正確な知識が無かった為に、直接高濃度のX線を照射しており、それによる急性障害を引き起こしていたそうです。

急性障害については恐ろしい表現が並べられています。皮膚の水泡が発生する、髪の毛が抜けるといった軽い症状から、放射線被爆による自律神経の障害による嘔吐、造血器官の障害に寄る血球の一時的な急減といった症状、果ては、腸内の繊毛細胞の死滅による消化吸収不全、細菌感染による死、中枢神経を侵されることによる死、が挙げられていました。

職場環境の劣悪さもあいまって、放射線関係者が身体を壊していた実情も紹介されていました。

こうした実情は徐々に改善されていったようです。
X線照射の距離を長く設定したり、X線を濾過する板、身体を透過したX線を検出する被写体を堅い乾板から感光度の高いフィルムに変えるといった工夫がだんだんとされていったことで、照射X線量を数十Rから1R以下に抑えることが出来るようになったと言われています。そして、戦後の早い時期にICRPの勧告で、「この線量以上は越えてはならない」基準

それでも、長期間微量のX線を浴び続けることでそれがだんだんと蓄積されることで、後々起こる弊害や、一度強烈なX線照射を浴びて長いスパンを経てから起こる癌などの晩発性障害を引き起こす例は沢山あったようで、対策をとってから10年かけてやっとおさまってくる、ということもありました。

これから、放射線関連の仕事に就くことになるので、密封線源を扱うなど、ある程度の被爆線量を浴びることになるだろうと思いますが、現在では機械の発達によりPCアプリケーションの操作によって、より非侵襲的な治療方法を見いだせるようになってきています。

それまでには様々な犠牲があり、それを経てやっとここまできたのだ、という先人の知恵を知っておかなければいけないな、と風立ちぬもみて余計そう思いました。

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