炎症のメカニズム



炎症は異物の侵入などの外的ストレスに対する生体防御反応である。身近な例だと、咽頭炎や肺炎、虫垂炎といったものは全て炎症反応である。

炎症は外からの観察・患者自身の体感覚をもとに以下の5徴候を認めることが出来る。
発赤・腫脹・疼痛・熱感・機能障害

炎症は、外的ストレスによりおこった組織障害を修復し、再生するプロセスであり、組織球や各種免疫、化学伝達物質(ケミカルメジエーター)、補体などが絡みあっている。
基本的には局所が腫れるというように、血管と血管周辺組織の反応から始まる。

ケミカルメジエーターの例

<血管透過性因子>
ヒスタミン・セロトニン:肥満細胞・血小板
キニン系:キニノーゲン(血漿成分)
プロスタクランジン:アラキドン酸(血小板など)
IL-6:各種細胞
ロイコトリエン:アラキドン酸
補体・プラスミン:血液中


<白血球走化性因子>
ケモカイン:MCP1 IL-8(インターロイキンの八番目)
TNP IL-1:内皮細胞の接着分子


急性炎症のプロセス

①刺激を受けた部位の血管が収縮する。
②ヒスタミンなど血管作動性アミンににより血管透過性が亢進
③内皮細胞の収縮、細胞間の間隙が広がる。
④血管外へ血液成分が浸出する。白血球が血管外へ遊出し、刺激部位へ遊走する。

急性炎症の種類
漿液性炎:漿液が浸出する炎症。例えば鼻水や腹水・水ぶくれなどはそのうちの一例である。

カタル性炎:粘膜上皮が剥離・浮腫となる。大腸カタル・気管支カタル・鼻カタル・急性胃炎などが挙げられる。

線維素性炎:漿膜(胸膜・心外膜・腹膜)に主に見られる。線維素が析出し、呼吸や拍動のたびにこすれる。この線維素が細胞の壊死した膜様物を形成する偽膜性炎症となる。

化膿性炎:比較的小さな異物を排除する好中球が多量に含まれる浸出液を生み出す炎症。
①蜂窩織炎(間質を蜂の巣に見立てて、好中球が至る所にちらばっている様を示す)
②膿瘍(壊死部に膿(うみ・のう))が貯留
③蓄膿症(体腔内に膿が貯留)
※ヘルペス:皮膚・粘膜表面に現れる膿包
④壊死性炎(壊死の目立つ炎症)
※結核:病変部で乾酪壊死 胃潰瘍:胃液→組織融解→虚血→壊死へ

刺激に対して一番最初に起こる生体反応が急性炎症であるが、炎症反応によって修復・再生が出来ず、外的ストレスが長期化してしまった場合、慢性炎症へ移行する。

慢性炎症は免疫反応に乏しい細菌・ウイルスであったり、トレランスの破綻による自己免疫性疾患など、生体防御機能で完全には対応出来ないケースがあり、このケースの場合は、始めから炎症が長期化する可能性が高い。

慢性炎症の例には、ウイルス性肝炎・肉芽腫性炎症(結核・サルコイドーシス)・膠原病などが挙げられる。


ウイルス性肝炎(HBV/HCV)
B型:ほとんど自然治癒する
C型:~70%が慢性炎症となり、肝硬変へ移行、肝細胞癌へと悪化する。

肉芽腫性炎症:病原体に特異的な肉芽腫を形成する。

①結核結節:中央部に乾酪壊死を認める。この乾酪性肉芽腫は細胞の壊死した中央部に炎症反応が及ばないため、結核菌が生き残ってしまうため、結核が慢性炎症として長引き易くなる。中央部に炎症反応の及ばない乾酪壊死部が存在し、その周りを多核のラングハンス細胞やマクロファージ由来の類上皮細胞などが取り囲んでいる。

②サルコイドーシス:乾酪壊死を認めず、肺やリンパ節・肝臓などの多臓器に肉芽腫病変が形成される。

トレランスの破綻による自己免疫性疾患
組織や細胞などの自己抗原に対して免疫応答は本来おこらない。(トレランス)細菌やウイルスが浸食してしまった体細胞を「非自己」と認識して、排除する。しかし、このトレランスが何らかの原因で破綻し、自己組織に対して自己抗体を産生自己免疫の機序で全身の結合組織がおかされることがある。

このような病気を膠原病と呼ぶ。例えば関節リウマチなどがそうで、全身性炎症疾患であり、自己免疫性疾患の一つである。

コメント

このブログの人気の投稿

ポジトロン核種・サイクロトロン核種の覚え方

GM計数管のプラトー特性:スケーラーを使って

体表指標