MRIの高速撮像法FSE,GRE,EPI

外部磁場の不均一性を集束と再集束によって排除するSE(スピンエコー)法によって、MRIの信号強度は高くなり、SN比が向上した。

しかし、医療現場において利用するにはまだまだ時間がかかる。



位相エンコード数×読み取り積算回数(NEX)×スライス枚数×TR(繰り返し時間)を考えると、TR=200msで位相エンコード数128、スライス枚数5とかだと128sec=2分くらいかかる。実際は体軸方向に長く撮像するし、TRがもっと長い場合、位相エンコード数が2倍、4倍になるとそれだけでどんどん時間がかかるようになる。

そこで、出来ればCTと同じくらい瞬時に撮像出来るシーケンスがあればもっと便利になる、ということで1980~1990年代くらいにFSEEPIGREなどの高速撮像法の研究が行われていたらしい。

FSE、EPI、GREってなんですか?

MRIの基礎的な原理は以前書いた記事を参考にしてもらうとして、、


(雑な理解をすると、電子レンジであっためた時、冷たいところ温かいところに別れる。そこで、ある周期の波をあてて温まる度合いの差(=核スピンの差)を電気信号に変換して比較して、「この場所は何か違うものが入っている?」みたいなことを調べようとするのがMRI。ただし、電子レンジと違ってあったまっちゃだめだから(SAR)、そこは気をつけるw)

高速撮像をするには、主に二つの方法がある。一つは核スピンを集束反転させる180°パルスを何度も連続してかけまくる。(Spin Echoを使うのでこれがSE系)もう一つは核スピンが微妙に変化する傾斜磁場を使って小刻みに信号をとる。(Gradientを使うのでGradient Echo=GE系)

出典:MRI World


FSEはSE系の高速撮像法、Fast Spin Echo法のことで、GRE、EPIはGE系の高速撮像法のことである。EPIはGREの手法を更に高速化させて、読み取り磁場を連続してかけ続けて、とりあえずさっさと撮像しようぜ、っていうアバウトなシーケンスである。ただ、めちゃくちゃ装置の負担が大きいし、コンソール側もデータ処理を高速にやらないといけないので、最近になるまで実現しなかった。

日立のMRI装置によるFSE(出典:mediimagingsales)


それぞれに一長一短があり、利用出来る場面が変わってくる。FSEは腹部の撮像などに用いられ、MRIの周波数成分を構成する複素数平面(=k space)の半分を用いて画像再構成するハーフフーリエ法と組み合わせて、用いられる。色々な繰り返し時間を持ったエコーがあるため、後半になるにつれて、エコー成分が少なくなる。
EPIによる拡散強調画像(DWI)
この画像は1.5歳児の片麻痺片側けいれんでCTでは異常所見がみられず、MRIで撮像。
高信号のため、脳梗塞か急性炎症が疑われる。
(出典:Radiopaedia)

EPIで撮像出来るDWIは脳梗塞や急性炎症で高信号が得られるので有用である。(参考:http://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/13200)

GREやEPIは、傾斜磁場を用いているため、局所磁場の不均一性の影響を受ける。(T2*=T1+T2)ざっくりいうと、それぞれの組織によって細胞の種類が違うので、余計な周波数成分までとってしまうということ。一方で撮像がほぼリアルタイムで行えるので、水分子の拡散(DWI)や灌流(Perfusion)をみることが出来る。

AxialのGRE像(T2*)
(出典:Radiopaedia)

<参考>
Fast Spin Echo(IMAIOS)
Fast Spin Echo(MRI World)
各種MR撮像画像撮像法の用語解説(エーザイ)

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